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タッチパネル表示器 誕生から20年を迎えて

HOW TO からHOW WHO時代に対応するパネルとは

1.タッチパネル表示器市場の環境動向

概要:
制御・計装業界にタッチパネル表示器がリリースされてから約20年が経過する。当初のタッチパネル表示器の用途は、シーケンサの入力信号出力信号などの状態表示と、操作盤としての機能であった。
当時、操作盤の製作担当者より問題点として改善要求されていた、①盤面の設計を容易にする、②ソフトウェア再利用による開発期間短縮、③盤スペースの縮小を可能にする、④ハーネスなど組み立て時間の短縮などのニーズに、タッチパネル表示器は全て対応できた。更に情報処理機能としても付加価値も増した。それ以来押しボタンスイッチ、パイロットランプ方式からの置き換え需要として、採用するアプリケーションが急増した。

利用量の増加:
2007年度のシーケンサ生産量(経済産業省機械統計)は、約187万3千台、売り上げ1262億3500万円、プログラマブル表示器生産量(NECA統計)は、73万台、売り上げ460億円に成長した。10年前の段階で、シーケンサに装着されるプログラマブル表示器の割合は約4台に1台でしたが、昨年度は2.5台に1台と装着率の増加も続けている。今後情報産業との融合化がさらに進むと300万台の新市場が形成されていくと予想される。

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デバイスの進化:
タッチパネル表示器リリース以前のHMI操作方式には、タブレット上で操作するマウス入力か、ライトペンによる画面指示入力が主力であった。表示部のデバイスはCRTが中心で、その後プラズマデバイス、モノクロ液晶、カラーTFTと変化し、現在ではサイズも豊富になり、26万色のカラー表現も当たり前になった。パソコンモニタ、テレビの液晶化、カーナビなどの普及で、更に低価格化が実現している。最近のデバイスとしては、有機ELの出現である。すでに小型デバイスとして携帯電話用には使用されているが、今後中型のデバイスは産業界で有望なデバイスと成る。5~10Vの直流電圧をかけて自発光し、最小3mmの薄さまで加工できるのが魅力である。表示器も組み込む形式から貼り付ける形式になるのは時間の問題である。

2.顧客ニーズの変化

20年間に表示器を取り巻く環境も大きく変化している。製造原価比率の約60%を占める液晶の価格も初期の1/5以下になり、CPUの性能向上、ソフトウェアの豊富さも著しく進化している。

第一世代:シーケンサの顔として
シーケンサの状態表示、操作部としての表示器では、あくまでシーケンサがマスターで、表示部がスレーブの関係であった。機能面ではプログラムレスの作画ソフト、タッチパネルの反応スピード、部材の耐久性などが重要視された。

第二世代:顔から頭脳へ
表示デバイスの品質向上、カラーの色数の増加、CISCからRISC型プロセッサーの出現で、回路基板の縮小化とアプリケーション機能の自由度が画期的に増した。
各表示器メーカは挙って画面表現力、操作機能、外部ペリフェラルとの接続機能を開発した。そのために必要なリアルタイムOSの選択も重要だった。

第三世代:制御操作盤とグラフィックターミナルの二極化
タッチパネル表示器も10年を経過すると、制御系メーカの制御操作重視と、コンピュー系メーカのグラフィックターミナル思考重視の二極化現象がはっきりしてきた。同時に表示器にマクロ編集機能を搭載したもの、ソフトPLC機能を搭載した製品が登場し顧客満足度向上役を果たした。

制御系メーカの操作表示器機能は、生産現場の各種制御プラットフォーム共通化
『IQ Platform』としてP.A.Cを成功させた。情報と制御をe-Factoryネットワークで構成している。シーケンサ,モーションコントロール、サーボ・インバータ、CNC、ロボットコントローラの一元管理手法の確立である。

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コンピュー系メーカのグラフィックターミナル思考では、マルチメディア機能の充実を図る。データ収集、演算、描画、インターラクティブな通信を充実している。制御、計装業界用途と情報系アプリケーションの融合は、アプリケーションの幅を広げる。

第4世代:新しいコンセプトの出現
2008年ESEC展示会にて新しいコンセプトのタッチパネル表示器が出現した。
2010 年までに情報系と制御系が80%融合するといわれていたコンセプトを持った商品である。20年間の表示器の歴史を大きく変えるリード役になりうる。①GUI、作画ツールとして、従来型の各メーカオリジナルの作画ツール方式から、世界中で広く使用されているAdobe社Flash Lite 3を標準ツールにした商品である。このツールは誰にでも使いやすく出来ており、充実したWebブラウジング機能、ビデオコンテンツ、インタラクティブコンテンツを制作出来る。グラフィックデザイン担当と制御設計者を完全に分けて制作することが出来る。当然画面上に制御指令の論理Tag機能の生成も可能である。

第5世代:制御と情報の融合 

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次世代、顧客ニーズのポイントでは、情報化投資を下記課題の改善を目的にしてくる。

  • 過去の企業内情報化投資の80%は機能していない
  • 情報を探すために就労時間の25%を費やしている
  • 企業の知的財産の60%は電子メールの中に埋もれている

○ H.M.IからH.I.I機能へ

現場作業者の要求は、制御機器からの状態表示、操作盤機能から、現場作業者が
データマイニングされた知的財産との会話が中心となる。そのために必要な機能は豊富な情報化されたデータベースと、企業内高速データ検索機能である。作業者は、瞬時のアドバイスや判断材料、シミュレーション機能、予知予防情報を必要とする。

○ HOW TOからHOW WHO時代に

タッチパネル、表示器、インターネット、モバイル、マルチメディアなどの採用自身に付加価値が無くなるとき、それらは単に情報を得るための手段となる。利用者の要求は、方法論(HOW TO)から問題解決のアドバイスが得られる機能を求めるようになる。必要な情報はIn Memory 上で最新の情報化されたデータベースに存在するか、豊富にある企業内情報を高速検索し、最適な事例を選ぶマイスター機能(HOW WHO)を必要とする。

○ 今後、アプリケーションに対応すべくハードウェアは、クライアントサーバ型か、一台でインテリジェントな機能を持ち合わせたスタンドアロン型に二極化される。技術的には分散型処理の概念、Web対応、組み込みデータベースの搭載、ワイアレス搭載、ユビキタスモジュール搭載、RFID R/W機能の搭載などが必要となる。デュアルコアのプロセッサーのリリースに伴い、2種類のOSを同時に利用できるようになる。情報処理とリアルタイムコンとロール、旧バージョンソフトと新バージョンソフトの併用なども考えられる。知的財産の利用に関しては、データマイニング、情報の可視化、ビジュアルな表現など、いずれも顧客が機器、OS、開発環境を選んで現場に最適なH. I. Iシステムの構築が簡単に出来るコンポーネンツの提供が必要となる。

参考資料:
CISC(シスク)は複雑高度な命令セットを持つ、マイクロプログラム方式の従来型のアーキテクチャ。Complex Instruction Set Computerの頭文字。

RISC(リスク)とは、Reduced Instruction Set Computer(縮小命令セットコンピュータ)の略で、マイクロプロセッサのアーキテクチャすなわち設計手法の一つである。制御命令の数を減らし、加減算などの単純な処理の組み合わせによって回路を単純化し演算速度の向上を図ろうとする手法である

PAC(Programmable Automation Control)
プログラム可能なロジックコントローラPLCから、通信機能,大容量メモリー,更に高速CPUがあらゆるアプリケーションに対応可能な汎用オートメーションコンポネンツ

デュアルコアプロセッサ

1つのパッケージに2つのプロセッサコアを集積したマイクロプロセッサ。2つのプロセッサコアは基本的に独立しているため、それぞれのプロセッサコアは他のプロセッサコアに影響されることなく動作できる。

H.I..I(Human& Intelligence Interface)
作業者が知的財産と直接会話し、課題解決していくための会話型情報ネットワーク

【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)