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世界に拡がる企業の社会的責任とサプライア事業への影響

1. Warranty Costの管理システム構築の必要性

昨今製造業の生産者責任が、企業を取り巻く社会的責任の変化と共に緊急課題となっている。2000年代の食品製造の品質管理から現在は、自動車産業の品質保証に対して、消費者の目は向けられるようになってきた。特に北米の安全規制に対する法の整備は、直接日本の製造業界に影響してくる。

1) 安全に関る規制が日米で相次ぎ強化
① 米国TREAD法改正(2000年11月;リコールの報告義務の拡大やそれを怠った時の罰則規定強化) 日本は改正道路運輸車両法(2002年7月法改正)
② 米国FASB
<※1>FIN45改正(2002年11月;債務の保証と保証提供者の透明性高い会計上開示要求)
③  米国NHTSA<※2>衝突後の火災事故を減少させるための安全基準強化
④ FASBと国際財務会計協会が保証の開示基準見直しを調整中

2)自動車製造業とサプライアへ製品の安全性と品質保証の詳細 且つスピーディな開示(見える化)要請
① リコール一件解決するために必要なメーカ費用$200M(200日x$1M/日)
② 米国デーラが自動車販売で得られる利益 $174/1台
③  メーカが販売する自動車に必要なWarranty Cost $700/1台
④ 2003年北米のWarranty Costは、売上の2-3%($12B/年)

3) 企業の社会的責任の取り込み
① サプライチェーン全体の管理運営に迄拡張する傾向
遵法・良き企業市民として経済・社会・地球環境に配慮した事業活動の実践と、接続可能な社会発展への貢献が求められる
※1--FASB:米国財務会計基準審議会
※2--NHTSA:米高速道路交通安全局

2. グローバル・サプライチェーン時代の品質管理

製品が企画設計段階から製造、及び市場で使用され、回収・廃棄・リサイクルされるまでのライフサイクルにおいて、品質に関するもの作りプロセス・マネージメントを精度良く且つ透過性高く実践するには、人手だけに頼らない管理手法を採用し、究極的には発生を事前に防止する予知予防保全を実践できる、ナレッジ情報の収集・蓄積・管理運営する体制を確立する必要がある。
一度、不具合が発生してしまった時は、短時間・容易に原因の究明・報告ができ、関連する商品への影響度分析と評価報告が適切に出来る仕組みとすることが必要である。

1)設計品質(企画・設計段階)マネージメントとは:
設計、試作から製品化段階での機能・性能と環境・リサイクルアセスメント確認を踏まえ、もの作りの生産性・品質保証・デリバリ性と投資採算性を分析評価しナレッジ情報の蓄積。(素材選定基準・工程設計と製造管理限界値設定、品質基準設定、等)

2)製造段階品質マネージメントとは:
量産時のVE・工程(工法)改善と製造品質に関する管理限界の見極めとそれら情報の収集・履歴化、製造プロセス情報と関連した製造装置保全情報の継続的な収集・ナレッジ化と評価分析による品質基準の改定(随時監視)

3)出荷後のクレーム・リコール対応マネージメントとは:
早期のクレームから品質不良内容の把握と品質不良箇所、原因、派生商品と、もの作りプロセス・設備の同定、報告、開示。派生製品を明示し対応策実施と報告・開示。情報のナレッジ化による設計品質、製造段階品質に対する新たな品質基準改定

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3. 品質管理システムとその役割

1)Tracer/Ⅰ(稼動情報収集ユニット)
一般的に製品は、工程毎、MESで管理された指示に従い、準備された製造プログラムの稼動条件で加工される。加工過程に装置の実動作状況の結果を各センサー類、画像などの手段で収集する。製造品質基準と実態とのタイミング誤差や、プロセス中の状況変化を確認するには、標準時間の基に情報収集し、データサーバへ送り、稼動情報として蓄積される。

2) Tracer/Ⅱ(検査情報収集ユニット) 
各工程の加工段階か、作業終了時には品質の検査測定がある。各測定値は製造品質基準に対して良、不良の判断を行い、工程の製造管理限界と、装置のレシピィ設定にフィードバックを掛ける。加工品質を安定させる場合と、出荷後のクレーム・リコール対応の時必要な製造履歴確認のための情報とに分けられる。検査測定値は、データサーバへ送り、品質検査情報として蓄積される。

3) REM Center(サーバ)/BIサーバ
稼動情報と検査情報は、必要に応じてデータサーバから情報を取り出し要因分析が可能である。解析として、情報を一元化し、MESから得られる個別の製品ロット番号、レシピィ情報などの製品毎、品質基準設定値に対して、実動の情報に、どれだけの誤差が生じているかのかを分析する。その要因分析、問題点の発生時刻、原因追究を、多次元の情報の組み合わせや演算結果で確認する事で、短時間に精度の高い異常現象に対する原因追究、問題傾向、現象分析などを知る事である。異常発生に対し、何故発生したのか?その原因は何なのか?それを防ぐにはどうするか?などを追究する形がナレッジ化に繋がる。

品質に関する管理プロセス・マネージメント構成図

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4. REMサーバが管理する品質プロセス管理マネージメントフロー

  1. 設計品質(企画・設計段階)マネージメント
  2. MES(製造実行システム)に対して生産計画を指示する
  3. MESは各製造装置、ラインに対して生産実行指示を出す。生産が開始されると、生産結果がMESにフィードバックされる
  4. Tracer/Ⅰ/Ⅱにより収集された、各情報は、センタのREMデータサーバに蓄積られる。
  5. REMサーバはMES経由で顧客の生産に必要なパラメータを受信、④から得た現場のデータを、解析した結果、⑥品質管理、⑦生産技術の管理下で品質管理に必要な情報を、企画設計部隊に送信し設計の見直しを図る (情報一元管理)
  6. [ 品質管理 ] ③各装置より送信された製造時の製造装置のコンディションと、検査測定時に生産技術から得た品質データを蓄積、解析してナレッジ化することで、品質の安定と歩留まり向上を図ると共に、出荷後のクレーム・リコール対応の際、速やかに報告できる準備をする。
  7. [ 生産技術 ] REMサーバから装置稼動状況情報や、異常情報を生産技術者は管理し、常に量産時の製造管理限界の見極めを行い、稼働率向上を図る。消耗品、装置のライフサイクル情報も管理する。又、原価計算に必要な情報管理もする。
  8. [ 装置メーカ ] 装置稼動状況情報から異常情報をメーカ・コールセンターで受信し、ラインの停止時間を最小限にする(予防保全、故障履歴)。
  9. [ Global・技術センタ ] グローバルに展開している全ての生産拠点から、GSCM実施に必要な情報収集と、現場作業者に役立つ技術情報の管理、提供をリアルタイムに行う。

製造現場の情報化

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5. 今後の課題

長年製造現場で行われていた品質管理、生産技術は生産性向上を目的とした人力に頼る自働化
であった。今後グローバル・サプライチェーン時代のWarranty Costを考える時、製造現場に本格的な技術情報ネットワーク構築が必要になる。この時初めて現場から人偏が取れ自動化となり知識を加工することで、日本が世界との競争力に生き残れるのではないでしょうか。
 

【用語略】
VE Value  Engineering
BI Business Intelligence
MES Manufacturing Execution System
REM Remote Engineering Management

【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)