1. Service on Network情報化時代
情報系グローバルネットワークシステムは、金融業界、航空業界などで既に確立されている。製造業界でも企業の国際化が進み、SCM※、CSR※企業の社会的責任への取り組みが盛んになり、現場のHMI機器相互間及び管理側とのリレーショナルな情報検索機能の必要性が出てきた。今後導入が盛んとなるRFIDシステム、トレーサビリティ管理はネットワーク経由で、総合情報管理システムの一部に取り込まれる。
※SCM:Supply Chain Management
※CSR:Corporate Social Responsibility
■多様化する情報とデータ保管
製造現場の「自律分散による情報制御システム」、Webによる「リモートエンジニアリング」構想などが、海外を含む製造現場に取り入れられ始めた。XMLベースのデータ交換,分散オブジェクト処理の標準化が基本である。情報の多様化によりデータ保管方法も変化している。数十、数百箇所に存在するデータをファイルで持つ方法からデータベース化し、誰でも、必要な時に、必要な情報を「Just In Time」で取り出せる構造となる。拠点数とデータ量が膨大になればその必要性は増大する。
■新たな業界の動き
組み込み系業界の潮流に新たな変化が出ている。主流は組み込み製品をより簡単に、安価で大量に構築する各種ソフトウェア・モジュールの出現である。
過ってHMI機器、特にOSに依存するコントローラ、表示器、計測器などの商品は、カーネルに熟思したSIerの市場であった。その市場に対し新たに多数の大手企業が参入し、あまりにも早い技術の変化、大量の情報処理、ユビキタスの普及などの課題に対応する「ソフトウェア・モジュール組み合せ」時代へと市場を変化させる。
■組み込み商品開発
従来HMI機器の大半は専用機であり、汎用機とは業態を分けて存在していた。特に組み込み系はカーネルの一部をいじるため、かなりの専門知識が要求される。特にバブル崩壊後の傾向では、各メーカーとも専用機が作れなく成って来ている。その主な理由は市場の変化が早く、グローバル市場が読めないため、開発予算が確保出来ない状態にある。又幅広い知識を持った技術者の不足も原因の一つでもある。
■注目されるHMI市場における組み込み系情報端末
HMI市場も専用機、汎用機の二極化商品から、オープンな汎用機にオリジナリティを持たせた、「オリジナル組み込み汎用機」の出現で市場は三極化していく。クライアントや一般SIerは、システム構築に必要なモジュールを組み合わせる事で、目的の機器が簡単に出来上る時代がきた。
2. 組み込みデータべースの出現(参考:オラクルBerkeley DB)
「Service on Network情報化時代」カーナビ、PDA、携帯電話商品などが組み込みDBを採用している。何れの商品も多様化した大量の情報をリアルタイムに処理するため、情報ネットワークのノード上で、データ保管の最適化が必要になってきたからである。組み込みソフトモジュールの参考例として、組み込みDB、「オラクルBerkeleyDB」を中心にご紹介しよう。
■どのようなアプリケーションに使用されているか
既に世界中で、携帯電話から株式市場のシステムに至るまで、広範囲なソリューシ
ョンとして約2億台のコンピューター上で組み込みDBが動いている。データ記録用DBとして(Google)、基幹DBのCache(Amazon)、モバイルDB(Motorola Linux Phones)、デバイス組み込み用(Cisco)、その他ルックアップとポインターテーブル、インデックス処理、セッション/ステータス処理、メタデータ管理で利用されている。
■組み込みDBはどのようなDBか
①ミッションクリティカル(24時間365日稼働)な高スループット、リアルタイムレスポンス、低レイテンシ(データ読み出しの遅延)を実現する。
②マルチスレッド(マルチタスク処理)、リカバリ機能もサポートしている。
③小さいFootPrintで動作する。 (350-650 kB)
④ソフトウエア・ライブラリの形で提供され、すべてのプログラムソースが完全公開される。導入後のDB管理を必要としない。
■Berkeley DB(XML)の特長
①C言語で書かれており、C、C++、Java、その他スクリプト言語用のAPIを持つ。
②トランザクションはフルサポートで、複数の分離レベルを提供
③XAインターフェースやレプリケーション(負荷分散機能)をサポート
④テーブルはメモリ上、ディスク上、あるいはその混在に対応
⑤レコード・サイズの上限は4GB、テーブル・サイズの上限は265TB
⑥XPATH 2.0、XQuery 1.0でXMLをネイティブ・サポート
⑦1つのデータベースでXMLデータと非XMLデータを使用可能
3. 組み込みDB出現で本格化する自律分散型情報ネットワーク
製造現場の情報の流れが、集中処理型からネットワーク分散処理型に変化していく。
実用へのトリガーはXMLの普及と手軽に使える組み込み型DBの出現である。
■製造業における情報制御システムへの要件
①オープン/グローバルデファクトの低価格システムの段階的導入
②グローバルスタンダードで最先端製品/生産技術をいち早く海外生産にも展開
③市場変化への迅速な対応とリアルタイムな情報把握
■自律分散型Service on Network実現の5つの要素
①拡張容易性
稼動中システムを止めずに、ネットワーク改造、ノードの拡張可能
②保守性
稼働システム上のノードの状態監視機能で、オンラインデータを用いたテスト可能
③信頼性
部分故障が起きてもシステム全体は不停止、重要度に応じたノードの多重化が容易
④接続性、汎用性
コントローラ、PC、WS、サーバを統一インタフェースで接続、流通ソフトや汎用コンポーネントの利用可能
⑤高性能
マスターの負荷集中を解消、ノード数が増えてもネットワーク負荷が増えない
4. 自律分散にDBを付加した情報制御システム構成
図3「各デバイスからの生データ」を機器が保有するDBへ発信→「各機器が保有するDB」から自律的にデータを必要とする人へ発信。当然情報は事前には編集しない、エンドユーザ主導で必要なデータ収集/自由に目的に応じて編集することで、改善に必要な情報→非定型な情報収集/非定型業務への迅速な対応が可能。リアルタイムでの問題抽出と現場改善の早期実現ができる。
シスム構築に当たっては、現場情報の個別化と「Just In Time」が可能な仕組みにする必要がある。フアイル方式データ保管特有のOpen、Closeアクセスが不要な分、処理スピードと信頼性を上げられる。冗長化したデータ保存よるバックアップ、アクセスログ解析機能も実用的である。
世界で最もデファクトな技術を使い、現場作業員を含めた「情報武装化システム」が手軽に構築できるツールが、今現場で求められている。
【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)