サイトへ戻る

実験から実用へ、動き出したRFID31兆円市場

1. 事業化に向けてのマーケット状況

10年前テキサスインスッルメント社製ICTagから始まった日本の RFID事業も、野村総研発表の図RFID普及ロードマップのように、政府機関の各種実証試験が終了し、05年,06年で実用レベルに突入した。昨年後半からの Gen2 リリースが始まり、07年前半市場がブレークする準備段階に入った。全てのトリガーは、流通業最大手のウォルマートのICTag導入である。導入理由は RFIDの低価格化、SCM、CRMの形態が変るなどシステム的にも利便性、ROIが十分見込めるからである。09年運輸,小売り,総合アパレル、製造の分野だけでも1000億円の市場となる。

broken image

2. RFID導入の基本的知識

2-1 RFIDとバーコードの比較
RFIDは、タグ、ラベルIDなどが判読可能な点、バーコードといくつかの類似点が有るが、RFの重要な利点は、情報読み取り時の「視野方向」を要求しない事である。バーコードでは、レーザービームによって直接走査するので、製造現場のような油、粉塵、光源の不安定な環境下とか、読み取りの瞬間にレーザの視野方向を妨害する可能性がある。アプリケーションでは信頼性が低下する事がある。また最近の傾向としてレーザービームが、作業者の目に入ると健康上良くないとの結果で、国際空港のチケットの読み取り装置では既に使用が禁止されている。レーザービームの使用に制限が掛かると、現状では方法として画像処理が有効だが、視野方向の問題と費用面で採用しにくい。

broken image

2-2 ホストコンピュータと入力/出力機能
タグから入手したデータを実用的に利用するには、データを処理するホストコンピュータか、タグデータに応答する何らかの出力機能を必要とする。多くの場合現場作業者の利便性を考慮し、ホストコンピュータと出力機能の両方が、RFIDシステムの中で使用される。システム構築で考慮すべき点は、RFIDの通信方式がシリアル通信のため、通信速度の点で高速の搬送システムでは、毎回ホストに問合せをしていると通信が間に合わなく成る事がある。システム構築の際は予め情報量と通信速度を考慮したシステム構築が求められる。

2-3 RFIDシステムの構築での考慮点
RFIDシステムには、システムの基本設計の際、性能に影響する要因全て調整する必要がある。またシステム導入時にも最適化のチューニングが必要である。

①ICタグの特長を理解する(ICタグの種類、取り付け位置)
②リーダのアンテナ特長(ICタグとR/W機器は水平、垂直偏波を合わせる)
③ICタグを取り付ける対象物(伝導性のないプラスティックやダンボールはRFのエネルギーを透過しやすいが、金属や導体はRF信号を遮断したり、反射したり拡散させる。液体はRF信号を吸収したり弱めたり、拡散させる)
④対象物の分類と操作(ICタグは整理して物体に付ける事と、対象物を取り扱う装置の特性を十分把握する事。例えばフォークリフト、ベルトコンベア、ローラーコンベアなどはそれぞれノイズ、電磁波、機械的振動、静電気の放電から来る影響を考慮する必要が有る。)
⑤システム設定は、リーダのファームウエアは基本動作のプログラムで、起動と終了、駆動時間、タグとデータなどを規定する命令。アプリケーション・ソフトウエアは、リーダの操作を実行する、制御用の命令である。
⑥環境条件としてのRFIDは様々な温度、湿度、衝撃、振動に耐えられるように設計されている。
⑦フィールド内のタグ数は、一度にリーダの内に入るタグ数は「タグ密度」と呼ばれますが、読み取り速度に限界があるため、許される処理時間との関係を考える必要がある。

2-4 システム構築で便利な機器類
RFIDのリーダライタを設置する環境は必ずしも良いとは限らない。スペースが狭い為に現場にパソコンを置けないケースや、ネットワークが張れない場合がよくある。そのよう場合いはRFIDインタフェースユニットや、無線LANユニットを利用すると手軽に低価格でシステムの構築が可能である。

①RFID/IFユニット
リーダライタとのプロトコルの通信制御をインタフェースユニットで補完し,上位アプリの
負荷を低減する。またLANを介す事で妨げとなるタイミングのずれや、複雑なコマンド処
理を補完する事で安定したリーダライタを行う。機器の応用で一括管理も可能と成る。
②無線LANメッシュネットワーク(バケツリレー)の利用
リーダライタのデータ量はきわめて少なく、またシリアル通信も低速である。そのためメッシュネットワークが十分に利用できる。

broken image

3. 導入事例(産業機械製品組み立てライン)のトレーサビリティ情報監視システム

3-1システム概要
産業機械製品の組み立てラインでRFIDシステムを導入した例を紹介する。
現場は「組み立てる機械製品」をローラーコンベア上のパレットに載せ、移動させながら16工程の作業を行うシステムからなる。

3-2 システムの特長(導入前の問題点:現場からの要求)

①ライン変えが頻繁にあるので工程間にはネットワークを使用しない。
②工程ラインの入口出口のみホストコンピュータとの接続をするが、油や振動が多い環境下では情報と物(機械製品)と一体にして移動をさせたい。
③作業工程上高速処理が出来、経済的なRFID I/Fユニットを採用した。
④製造ラインの工程状況を正確に把握出来てないため、工程のボトルネックの発見が困難である。
⑤「製造ラインにおける工程進捗状況把握」が、工程に分岐・合流が複雑に入り組んでおり、ホストコンピュータで集中管理を行うのは負担が大きい。

3-3 問題解決策

①RFIDシステムを利用して人・物・時間・製品・部品情報を詳細に収集。
②加工製品を載せるパレットにICタグを取り付ける。
各工程の作業情報(加工情報・加工時間)を工程終了毎に、ICタグに書き込を行う。パレットは工程上の情報をもって移動する。作業工程中にはホスコンピュータとの交信を持たない。

3-4導入効果

①各工程で作業時間・滞留時間を把握出来る為、ボトルネック工程が判り、工程改善を行える。
②不良製品発生の要因特定の基礎情報が入手出来、工程へのフィードバックが容易になった。
③製品の位置を簡単に追跡出来るので、正確な進捗管理や納期把握が可能。
④工程中の全ての情報は最終段階でホストコンピュータへ転送する。

3-5システムの動作

①組み立てライン工程の入口で「組み立てる機械製品」のQRコードで書かれた製品番号を読み取り、パレットに埋められたICタグに製品番号を書き込む(工程が進むと汚れのためQRコードが解読不良となるため)。同時にホストコンピュータに対し、作業開始を伝える。
②パレットが作業工程箇所に来ると、リーダがタグの認識番号(機械製品の種類)を読み取り、RFID I/Fを通してPLCに伝える。
③PLCはタグの認識番号に応じて予め要されたプログラムを選択し、作業を実施する。
④作業が終了するとPLCに記憶された(作業者名、作業開始時間、作業終了時間)など必要事項を、RFID I/Fユニットを通してICタグに書き込む。当然作業者はそれぞれの作業現場で、作業開始時に自身のIDを工程の装置に書き込む。
⑤一つの工程が終了するとパレットは次の工程へを移動する。
⑥工程最後に機械製品は検査工程に入る。検査で結果情報はタグに書き込まれる。
⑦全ての工程が終了するとリーダはICタグの情報を全て読み取り、ホストコンピュータに工程の結果情報として転送する。
⑧用済みのパレットとICタグはリフレッシュされ回収後再利用される。

broken image

4. 今後の展開へ向けた運用課題,開発方向など

RFIDタグは、移動体に取り付けられ情報伝達が可能な点で携帯電話、価格面からの手軽さはバーコードと双方の良さを持ち備えている。米国では現在一個100円以上するタグの価格も、2006年には50円2007年には20円、その先5円で供給する計画が動き出した。後は我々が如何に使いこなすかだけである。

【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)